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2018年4月11日 (水)

『現代語訳 南海寄帰内法伝 七世紀インド仏教僧伽の日常生活』

Nankaikikinaihouden

  義浄: 撰   

  宮林昭彦・加藤英司: 訳   

  法藏館(京都 2004

 

 7歳で寺に入り、善遇と慧智という師に育てられた少年は最初外典を学んでいましたが、12歳で善遇法師の死に遭い、以後は内典の学習にうちこみ、14歳で得度します。その後、洛陽や長安に学んだ後、インドへの留学を望むに至り、年老いた慧智禅師を故郷に訪ねました。慧智禅師は義浄の仏跡観礼は自分の随喜するところであると励まし、送りだしたといいます。『南海寄帰内法伝』は中国の僧・義浄が671年から694年にかけてシュリービジャヤ王国(室利仏逝=今のスマトラ島か)を経てインドに向かい、そこで行われていた僧伽(サンガ)の戒律をまとめた書です。出家者として守るべきことは多く、義浄は衣食住のいちいちを事細かに示しますが、そうした律が守られていない、あるいは伝えられていない中国の仏教界を嘆きます。具合が悪くなれば絶食をして病を治すインド医学を評価していますが、一方では中国医薬の優れていることにも触れ、また彼の地と中国の薬草の違いにも言及しています。また中国での少年僧たちの焼身自殺について、非常に厳しい批判をしていて、そこには法華経の誤読がある、と述べます。人の身に生まれ、仏の法を聞いたという類まれな有価値のわが身を軽んじてはいけない、と強く警告します。

 

 7世紀の出家者の暮らしが具体的にわかるため貴重な資料としても扱われますが、この現代語訳は大変読みやすく工夫され、言葉を補い、また非常にわかりやすい振り仮名がつけられています。たとえば「天性」という言葉に対し「うまれながらのこころのはたらき」と振り仮名があり、単に学術書としてだけではなく、真に義浄の声を汲み取れるよう心遣いがなされていると感じました。

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