« 『がんに負けない養生レシピ』  | トップページ | 『審視瑶函』(巻上) »

2012年5月15日 (火)

『吉益東洞の研究 日本漢方創造の思想』 

Photo     寺澤捷年:著  岩波書店2012

 今日取り上げるのは江戸時代中期の革新的な医療を実践した吉益東洞の評伝です。今年1月に出たばかりの本で、著者の寺澤先生は、国立大学における初の漢方医学の教授であり、また韓国ドラマ『チャングムの誓い』の医学監修者、さらには『広辞苑』改訂に際して漢方医学関連の用語の執筆者として知られる方です。

 寺澤先生は在学中の1965年から千葉大学東洋医学研究会に所属され、藤平健、小倉重成、伊藤清夫に漢方を学ばれ、1970年に千葉大医学部を卒業。富山医科薬科大学附属病院和漢診療部長、同大学医学部教授、病院長などを経て千葉に帰られ、千葉大学大学院教授、千葉中央メディカルセンター和漢診療科部長を勤められ、また、和漢医薬学会理事長、日本東洋医学学会会長を歴任、現在は東亜医学協会理事長をなさっています。

 中国の伝統医学が拠って立つ陰陽五行論を否定し、中医学からは批判される一方、日本では神聖視される吉益東洞という人物を、「可能な限り、資料と史料に基づき客観的に」解き明かすことを心がけた、と序文で述べられているように、東洞の生きた時代を考察し、伝記や遺された歌、著作について細かく解説と考察を行われています。東洞の行状や著作が項目ごとに現代語訳され、それに対する考察があり、何か、教室で解説を聴講しているような感じを受けます。

 そうした中、「第六節 古書医言」に次のような言葉がありました。

 

      

       これは漢方の臨床を四十余年に亘って実践してきた筆者の実感であるが、たとえば『傷寒論』の読み方、そこから得る臨床上のヒントは、読み手である自分の力量・経験の蓄積の度合いによって、年を追うごとに、相当に違ってくることである。こちらが知識を深化させると『傷寒論』はそれに応じて応えてくる。既知と思っていた言葉、或は読み飛ばしていた文字に新たな意味を見いだすことも再々である。それが古典というものである、と言い切ってしまえばそれまでだが、そのカラクリに筆者は気づいた。つまり、ある「ありのままの真実」という「暗黙知」を、数語の文字で端的に「形色知」としたものが古典というものなのである。

 この「暗黙知」と「形色知」という言葉が吉益東洞を解き明かすキーワードのようです。

 

 

« 『がんに負けない養生レシピ』  | トップページ | 『審視瑶函』(巻上) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/586801/54715930

この記事へのトラックバック一覧です: 『吉益東洞の研究 日本漢方創造の思想』 :

« 『がんに負けない養生レシピ』  | トップページ | 『審視瑶函』(巻上) »