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2012年5月 9日 (水)

『環海異聞』

0011s 『環海異聞』は仙台・石巻の船乗りたちが江戸に米を運ぶ航海の途上、嵐に遭遇して流され、ロシアの島に漂着し、12年間の旅をして日本に帰って来るまでに見聞きしたことをまとめた本です。

 寛政五年癸丑(1793年)の冬、遭難。数ヶ月の漂流の後、「ヲンデレイッケ」島に着き、ロシアの役人に連れられて「オホーツカ」「ヤコーツカ」「イルコーツカ」「ペトルブルカ」を経て「ムスクワ」に行き、皇帝アレクサンドル1世に謁見した後、ヨーロッパとカナリア諸島、「伯面児(ブラシリヤ)」「マルケイサ」「サンベイッケ」「カミシャーツカ」を通り、文化元年(1804年)9月、長崎に帰って来ました。本当に地球を一周する旅でした。

 ただし、この本は漂流民自らが記録したものではなく、仙台藩の依頼により大槻茂質(玄沢)が質問、志村弘強が筆記したものです。その中には多くの挿絵があり、江戸末期の頃のロシアでの暮らしや技術、また太平洋の島の自然や風俗なども描かれています。(研医会図書館ウェブアルバムのページに挿絵を公開しています)

 この津太夫を中心とした漂流民たちの記録は、作家吉村昭氏によって『漂流記の魅力』という新書の中でも紹介されています。帰国後の石巻の漂流民たちは、開国を迫るロシアとそれを拒む幕府の狭間に置かれ、大黒屋光太夫と比べてもその扱いは冷たいものだったようで、そのひとりは自殺をはかったと伝えられています。

 2006年の展示会にこの『環海異聞』を展示したことをきっかけに、石巻若宮丸漂流民の会の研究者の方々が当館に来て下さり、その会報である『ナジェージダ(希望)』のご寄贈を続けてくださっている中、昨年春にあの東日本大震災がありました。ご存じのように石巻は大きな被害を受け、石巻漂流民の会の方々もその支援をしています。(支援の様子を伝える会報を研医会図書館のウェブアルバムで公開しています。)

 この4月からは、会の代表である大島幹雄氏が石巻日日新聞に『我にナジェージダあり―若宮丸漂流民物語』の連載を始められました。当館でも、被災地支援のひとつの方法ではないかと考え、石巻日日新聞の購読を始めています。(電子版もあるようですが、図書館では第3種郵便で送っていただいています) 動機は小説を読むためでしたが、紙面を見るとまだまだ震災の被害から抜け出していない地元のご苦労が読み取れます。でも、12年の長い年月を経ても帰国をあきらめずに頑張った船乗りたちのように、石巻の皆さんが前に進むことを応援しています。

 

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