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2012年5月18日 (金)

『東西医学の交差点―その源流と現代における九つの診断系』

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   秋葉哲生 著  丸善プラネット2002

 『東西医学の交差点』という書名からもわかるように、西洋医学と漢方医学とが協力しあうことを医学の理想形とする医師の著作で、第1章では我が国の医学の歴史が語られ、第2章では漢方医学で使われる9つの診断系について述べられています。

 同書巻末の著者略歴に拠ると、秋葉哲生先生は1947年、千葉県生まれ。千葉大学医学部を卒業された後、寺澤捷年先生の師でもある藤平健氏の指導を受けられました。1989年伝統医学研究会あきば病院を開設なさり、1997年には洋漢統合処方研究会を発足させ、日本東洋医学会理事・EBM委員会委員長、日本漢方医学研究会評議員、和漢医薬学会理事を務めておられます。

 著者は江戸時代の漢蘭折衷派の医師たちに注目し、彼らを現代日本の医学の原点であると捉えています。華岡青洲(17601835)・本間棗軒(18041872)らが当時の世界の先端である麻酔による外科手術を行う医師であったと同時に、漢方医としても他に抜きんでた存在であった、と記し、次のように評価しています。

     「彼らの特質は一貫した原則を求めるのではなく、それぞれの未知の隠された原則を尊重し、異なる体系を尊重できることであった。」

 後半の章では①症状群  ②腹診  ③気血水の異常  ④六病位  ⑤脈・舌の所見  ⑥口訣  ⑦現代の病名  ⑧本草的な知識  ⑨陰陽五行説 というそれぞれのアプローチについて、漢方的な言い回しを現代の医学に結び付け、また、各診断方法を述べ、その信頼度についても評価しています。

 漢方の運用で混乱しやすいことのひとつに、同じ言葉が東西で必ずしも同一の意味ではないことがあります。例えば血や臓腑、あるいは利尿、発熱という言葉が西洋医学と漢方でちがうものを指している、などを解説してもらうと、少しずつ頭が柔らかくなり、漢方が捉えやすくなるように感じました。また、各ページの下段に大きく注釈を入れてあり、漢方医家のことばや著作、言葉の説明がなされているのもこの本を読みやすいものにしています。

 医学という実学のために、無用な追求もせず、空論も排して、筆者のことばで言うなら「漢方医学の論理を医学的に取り扱える範囲とし」たところが魅力の本だと思います。

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